川﨑薫先生月経周期が順調であった女性が、月経の予定日を過ぎても次の月経が来ない場合は、妊娠の可能性が高いと考えられます。一方で、妊娠すると少量の出血や下腹部の痛みをともなうこともあり、月経と間違えてしまうこともあります。また、月経不順のある人や出産後にまだ月経が再開していない人は、妊娠していても気がつかないことがあるかもしれません。
月経がなくなることは妊娠以外の原因でも起こりますが、妊娠している場合には、それに加え、吐(は)き気や嘔吐(おうと)などのつわりの症状や、だるさ、熱っぽい、眠気などの症状が出ることが多いです。その他、胸が張る、乳首が痛い、気分が沈んだりイライラする、などの症状がみられることもあります。このような兆候がみられた場合は、まずは市販の妊娠診断補助試薬で確認するか、産婦人科を受診しましょう。ただし、つわりの症状や体調の変化を感じない人もいます。
市販の妊娠診断補助試薬（妊娠判定キット）により、妊娠しているかどうかを検査することができます。このキットは妊娠初期に胎盤絨毛(たいばんじゅうもう)細胞より分泌(ぶんぴつ)される尿中のホルモンを検出するものです。
検出感度が高くて月経予定日当日から検査できるものと、月経予定日の約1週間後から検査ができるものがあります。使用する場合には、入っている説明書をよく読んでください。妊娠判定キットは、あくまでも補助的に使われる試薬です。陽性となっても、初期流産や、子宮以外の場所に妊娠している異所性(いしょせい)妊娠などの可能性もあります。
異所性(いしょせい)妊娠の場合は、おなかの中で急に大量に出血することがあります。自分で検査して陽性の反応が出たら、妊娠を確定するために、産婦人科での診察を受けましょう。
最初の診断や妊婦健診は、産科のない婦人科のクリニックでも受けられます。妊娠の確定は「経腟(けいちつ)超音波検査」によって行います。腟(ちつ)から超音波プロープという機械を入れて、子宮内をモニターして判断するのです。超音波検査により子宮の中に胎嚢(たいのう)（赤ちゃんの袋）が確認できると、妊娠と診断することができます。胎嚢(たいのう)は直径が2mm以上になると、超音波検査で確認できるようになります。この大きさは妊娠4週後半に相当します。正常な妊娠では、妊娠4週で約80％、妊娠5週でほぼ100％の確率で、子宮内に胎嚢(たいのう)を観察することができます。
さらに、妊娠5週後半から6週前半になると、赤ちゃんの心臓が動いていること（心拍）が確認できるようになります。
赤ちゃんの心拍が確認できた場合には、最終月経（一番最後に起こった月経）の開始日もしくは、特定できる場合には排卵日や不妊治療における胚移植日から分娩（ぶんべん）予定日を決定します。月経の周期は、妊娠の診断や分娩(ぶんべん)予定日を決めるときの大切な情報となりますので、普段から手帳などに記録しておきましょう。
この心拍確認をもって妊娠が確定となり、医師から母子健康手帳をもらってくるように指示があることでしょう( 1 参照 )。妊娠で医師にかかるときは、病気ではないので保険が使えず自費となりますが、これ以降の健診費は自治体からの補助が受けられるようになります（ 2 参照）。
父親になる喜びを早く周囲に伝えたい、という人もいるでしょう。しかし、妊娠診断補助試薬が陽性になっても妊娠初期の流産である可能性もあります。流産をした女性の悲しみはとても大きく、流産したことを誰にも知られたくないと思う女性もいます。妊娠した女性はうれしい気持ちと不安な気持ちの両方で揺れ動いています。自分の両親やまわりの人への報告は、産婦人科で妊娠が確定し母子健康手帳を発行してもらうまでは控(ひか)えておきましょう。
［子宮の中の胎嚢(たいのう)（経腟(けいちつ)超音波検査）］
妊娠8週胎児 頭臀長19mm