産後や妊娠中の転職のリスク
妊娠出産前後に、仕事を変える方も少なくありません。しかし制度的には不利なこともあるため注意が必要です。
まず、産休(産前産後休業)に取得条件はありません。たとえ転職直後だとしても、取得は可能ですし、逆に産後6週については休ませることが義務になっているので、必ず休ませなければなりません。
しかし、育休は違います。取得条件に「引き続き1年以上雇用されていること」「子が1歳6ヶ月に達する日までに、労働契約の期間が終わることが明らかでないこと」が定められており、1年未満だと取得できない場合があります。各社の就業規則によっても違いますので、
転職時にはしっかり確認するようにしましょう。
お金の面でも転職直後は使えない・減額される可能性がある制度があります。
まず妊婦健診の補助と出産育児一時金の50万円は、原則全員が受け取れます。
問題になるのが出産手当金と育児休業給付金。出産手当金は、自営業や専業主婦でなく、働いていれば多くが要件を満たします。しかし健康保険の加入期間が12ヶ月に満たない場合、額が低くなる場合があり、転職1年未満は注意が必要です。
これに対し、育児休業給付金は「休業開始前の2年間に、賃金支払が12ヶ月以上」あれば受給資格が得られます。転職していても、前職と通算しこれを満たせば受け取れますが、転職活動などのために満たない場合は給付対象外になります。
お金や制度の面の問題もそうですが、転職は新しい環境になるため、精神的な負荷も大きいのが現実です。妊娠中~産後はメンタルヘルス不調のリスクも高く、妊娠前・妊娠中の転職は負荷が重なるため、あまりおすすめできません。
もし同時に検討している場合には、1~2年程度どちらかをずらすのが望ましいです。
また妊娠に伴い退職を希望するのは労働者の自由ですが、健康保険が切り替わるため、育児休業給付金などは受け取れなくなります。退職するつもりなのに妊娠期間だけ雇用を継続するのも問題ですが、その後にまた仕事をする見込みがあるのであれば、妊娠を理由に退職するのは早計かもしれません。
制度をしっかり理解した上で、出産後のライフプランを考えてみましょう。
(執筆:平野翔大先生 産婦人科医・産業医/医療ライター)