16週間

妊娠16週感染症予防 編

今こそ知っておきたい、感染症のこと。

永松健先生

国際医療福祉大学成田病院 産科・婦人科部長 病院教授

目次

  • お母さんの身体は、赤ちゃんの身体でもあります。
  • 生肉、生野菜、猫のフン… 私たちの身近に潜む、ウイルスたち。
  • 妊娠生活を前向きに過ごすための、感染症予防です。

お母さんの身体は、赤ちゃんの身体でもあります。

赤ちゃんの体の構造がほぼ完成して、お母さんのおなかと乳房も目立ちはじめる16週。一般的に安定期と呼ばれるこれからの時期は、控えていた外出や運動をはじめる方も多いかもしれません。そんな今こそ知っておきたいのが、感染症のリスク。細菌やウイルスが母体から子に感染することを「母子感染」といいます。感染症の中には、赤ちゃんの発育に影響を及ぼすものもあります。予防法を正しく理解して、おなかの赤ちゃんを守りましょう。

【赤ちゃんに影響を与える恐れのある感染症例】
風疹、サイトメガロウイルス感染、水痘(水ぼうそう)、伝染症紅斑(リンゴ病)、トキソプラズマ感染、リステリア感染、性器ヘルペス、性器クラミジア、梅毒、B型肝炎ウイルス など

生肉、生野菜、猫のフン… 私たちの身近に潜む、ウイルスたち。

感染症はコロナウイルスのように人から人へ感染るだけでなく、食べ物や動物から感染するケースもあります。ここではその中でも特に気をつけたい、ふたつの感染症をご紹介します。ひとつめは「トキソプラズマ」感染。加熱が不十分な肉類(牛・豚・鶏・ジビエ料理など)に潜んでいる細菌で、母子感染すると流産・死産や脳や視力の異常を引き起こす可能性があります。また猫のフンに混じっていることがあるので、飼い猫のトイレ掃除や公園の砂場や土をいじった後は、よく手を洗うようにしましょう。ふたつ目は「リステリア菌」による食中毒。自然の土や水の中にいる細菌で、チーズや生ハムなどの加工品や野菜にもまれに含まれることがあります。冷蔵庫内の温度(4℃前後)で繁殖するため、3日以上保管した生野菜を食べるのは控えてくださいね。

妊娠生活を前向きに過ごすための、感染症予防です。

「外出して、もし感染ってしまったらどうしよう」「肉類や生野菜はどこまで食べていいの?」そんな風に、不安になっているお母さんも多いのではないでしょうか。たしかに感染症は、誰もがかかる可能性のある病気。しかしきちんと予防をすれば、そこまで神経質になる必要はありません。逆に食べたいものが食べられずにストレスを溜めたり、運動不足になってしまっては赤ちゃんの発育にも影響が出てしまいます。大切なのは、感染症のリスクを理解して行動すること。そしてポイントを押さえて正しく予防することでお母さんのこころの平穏を保つことです。妊娠生活は、まだはじまったばかり。出産までの長旅を楽しめるように、備えられるところは備えていきましょう。

16週の妊婦さんへのメッセージ